日本伝統の定置網がスラウェシの漁村に
じゃかるた新聞2010年9月24日の記事から
日本の伝統的な定置網漁法を、南スラウェシに技術移転させる試みが、2007年から行われ、今年で終了した。2010年9月24日付『じゃかるた新聞』が、このプロジェクトが、大きな成果を上げていることを紹介している。以下に報道された記事の一部を紹介させて頂く。(編集部)
日本の伝統的な漁法として知られる「定置網」が、スラウェシ島南部ボネ湾のパレテ村の小さな漁村に定着しようとしている。東京海洋大の有元貴文教授ら三人の教授と富山県氷見市の定置網漁業者が協力し、二〇〇七年八月から国際協力機構(JICA)の草の根技術協力資金で着手した定置網普及のプロジェクトは、漁民の協業意識や資源保護への関心を高め、一日三百キロもの漁獲量を確保できる日もあるなど、漁村振興に大きな役割を果たす可能性が出てきた。有元教授は「インドネシアの広大な海に点在する漁村に定置網の技術を広め、漁民の生活向上に役立てたい」と語った。
パレテ村は、マカッサルの北東百三十キロ、スラウェシ島南部のボネ湾に面している。約三百世帯、人口約千三百人の小さな漁村。櫓(やぐら)を使った伝統漁業のほか、ダイナマイト漁なども行われている。ほぼすべての村民が漁業にかかわり、魚を売り買いし、野菜作りも行って食糧を自給自足している。
八月初旬、漁具・漁法を専門とする有元教授、漁業経営管理の馬場治教授、漁場環境・漁船の武田誠一教授の三人と、氷見地区小型定置網協議会長の浜谷忠さんと藪田浦共同網組合の浜野功さんの二人が現地を訪れた。
二〇〇八年三月、岸から沖合約一キロの海中に定置網を設置。長さは約百メートル。網を揚げて漁獲するための漁船も氷見市の船大工の技術を元に現地で作った。資材は西ジャワ州バンドンで日系企業から購入した。
一日の操業時間は網の中の魚を引き上げるだけの作業なので、約一時間と少ない。燃料費もほとんどかからず、ほかの漁法に比べ漁師の負担は少なくて済む。 プロジェクトは三年を経てこのほど終了したが、他地域への技術普及に向けたさらなる支援も期待されている。設置された定置網は、今後も漁師約十人が共同で網を管理し、操業を続ける。
一日平均約六十キロのアジやヒイラギ、カマスなどを漁獲。プロジェクト開始以前と比べ、漁民の一カ月の収入が一人当たり平均で約六十万ルピア増えた。日によっては三百キロ以上の魚が獲れる日もあり、今後は漁獲量を安定的に確保することが課題という。
漁師の妻ら家族にはアジやカマスの開きの加工技術を伝授。定置網で獲れたアジの開きがマカッサル市内のスーパーや日本食レストランに出荷され、人気を呼んでいるという。 有元教授は「定置網漁法は漁師の負担が少ないなど漁師にとってメリットが大きい。漁師が互いに協力することが不可欠なので、協業化が進み、インドネシアのような発展途上にある漁民の組織化を促す役割を果たすことも可能性だ」と語った。
掲載:2010年10月30日