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マカッサルの美しい並木道は17世紀の時代からよく知られていたようです。当時、ソンバ・オプにあった港都マカッサルの街には、約5㎞にわたって美しい椰子の並木道があり、太陽の光を遮り、歩行者に安らぎを与え、世界で最も美しい並木道と云われていたそうです。
1942年、日本海軍がマカッサルに上陸した際、海軍の下村部隊司令部が作成した冊子『マカッサル案内』(川崎市川崎市民ミュージアム所蔵)があります。この案内には「一、セレベス島の広さと人口」、「二、攻略戦並びに戦跡」、「三、マカッサル市の位置、人口、港」、「四、マカッサルの気候」、「五、マカッサルの民族」、「六、マカッサルの並木」、「七、歴史」が、14頁の冊子に纏められています。はじめて島を訪れる人達のために書かれた簡単なマカッサルの案内書です。その中で、「二、攻略戦並びに戦跡」に約7頁を割いている。海軍の誇らしい戦跡を紹介することは当然のことかもしれません。しかし、「マカッサルの並木」が歴史や民族などと同列に紹介されているのは興味深い。マカッサルの並木道は、上陸したばかりの日本人に強い印象を与えたのかも知れません。
以下に下村部隊司令部が作成した『マカッサル案内』の中から「マカッサルの並木」の部分をご紹介します。道路名は日本名で書かれていましたが、分かる範囲で現在の道路名、樹木のインドネシア語名を記しました。その後の戦災や道路拡幅工事などで大分変わっていると思われますが、現在はどうなっているだろうか。関連情報をお寄せ頂ければ幸いです。(編集部)
マカッサルの街に入って先ず目につくのは美しい並木であろう。その大部分は輸入種で都市の美観、鑑賞或いは防暑等の立場からよく研究されたものである並木はどの街路も一様の樹木ではなく各々異なった種類のものを植えている。代表的なものとしては次のようなものが挙げられる。
「タマリンド」豆科の植物で喬木性で平均二十米位。この通りには三十米位のものがある。熱帯には広く分布している樹で実は薬用になるし、その果肉は清涼飲料剤になり島民料理では「アッサム」(リンゴ酸)と云って盛んに使われる。材は建築に、また家具になる。
(注:インドネシア語 Kayu asam)
昭和17年に資源調査団が撮影した大和通りの写真
近藤哲郎氏提供
「インドシタン」これも豆科のもので、この土地のものである。落葉した後に実がなり山地には三十米位のものがある。心材は紅色染料、薬用に使われ、原住民間では「チャムパカプティ」或いは「チャムパカメラ」の名で呼ばれている。材は建築家具材となる。
(注:カリン(花梨、花林、花櫚、学名:Pterocarpus indicus)は、マメ科シタン属の広葉樹。別名、インドシタン、インドカリン 出典ウィキペディア)
戦前のHerenweg (Jalan Sultan Hasanuddin)
http://groups.yahoo.com/group/smansa-mks/message/2119
現在のハサヌディン通り (Juli 2009)
「マホガニー」センダン科のものである。常緑喬木材は楽器の製作、家具、船窓などに使われる。十月頃には実がなり、これが割れる時には大きな音がする。割れた殻はいい焚きつけにある。(注:インドネシア語ではmahony)
「カナリヤ」の木、カンラン科常緑喬木で見事な板根を張って居るのが目につく。(熱帯樹は板根を張るのが大体の特徴であるが、「カナリヤ」の木は著しいものである。)実は熟すと暗紫色になる。原住民はこれを食す。核は食用になり「カステラー」によく混ぜてつくる油は「カナリー」油として薬用になる。 (注:インドネシアではkenari, その実はkenari belanda でアーモンド)
「プロセラネム」の木、これは「台湾ネムの木」とも云われる。豆科で熱帯アジアに広くある。落葉した後には三寸乃至五寸位の実が無数になる。材は堅くて橋桁、家具に使われる。
「タガヤサン」豆科で「鉄の木」と云われる。(鉄木とは異なる)花は黄色の美麗なものをつける。「シタン」「コクタン」と共に三名木の一つで、材は建築に、家具に使われる。
(注:ウィキペディアによるとタガヤサンは鉄刀木、学名:Senna siamea、フローリングなどにも使われている。)
「アメリカネム」の木。豆科、枝が密生するのが特徴的で材は家具になる。
(注:日立のTVコマーシャル「この木なんの木」の木です。安田)
現在のHasanuddin Square (第二広場)
粟竹章二氏提供
「鳳凰木」原産地はマダガスカルで、年中赤い花をつけているのが特徴である。(熱帯に於いては開花期結実期がはっきりしないものが多い。一方が結実して一方で開花しているものもあれば開花ばかりして結実しないものもある。) (注:インドネシア語 flamboyan )
現在のJl.Penghibur (July 2009)
大王ヤシの並木に変わっている。大きな看板が景観を破壊している。
「大王ヤシ」ヤシ科輸入種で現在のところではまだ二,三米位のものであるが平均三〇米以上になるのが特徴である。
(注:学名は Roystonea regia、英名は Royal palm, Cuban royal palm)
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