マロスの古代壁画は世界最古?
Lukisan cadas dalam gua di Maros mungkin tertua di dunia
脇田 清之 Wakita K.
国道からの眺め
公園
Makassar から車で北方へ走り Maros の市街地を過ぎた辺りから右手にカルスト地形特有の石灰岩柱状の山が林立する光景が展開し旅行者を魅了する。(写真上左ー遠くて判りにくいですがー) 地元紙 Fajar on line (2006-3-5) によると、観光客を魅了するここ Maros-Pangkep 一帯のカルスト地形は中国の桂林に次ぐ世界第二の規模であり、現在この地域一帯の保全を計る為に国立公園に指定する準備が進められている。更に UNESCO の世界遺産として登録する計画も進められている。この地域にはBantimurung, Karaenta, Bulusaraung の保護林と Leangleang 地域も含まれている。遺産は風景だけではない。特異な動物相、植物相、多くの洞窟、歴史的な遺産も含まれる。ここでご紹介するスンパン・ビタ古代壁画もその遺産の一つである。Makassar 市内より約65Kmの地点 Pangkajene で右折した所にトナサ・セメントの工場(第1工場)がある。工場の門を抜けてしばらく奥へ進むと大きな公園に到達する。(写真上右) 公園の奥から941段の階段を登ると石器時代の洞窟にたどり着く。洞窟の天井には手形や動物の壁画が描かれている。(写真右下) 南スラウェシ州政府の観光案内書によるとこれらの壁画は5,000年前古代人によって描かれたものでインドネシアが誇る遺跡の一つであると書かれている。しかし貴重な遺跡にしては何の保護もされていないのが気に掛かります。
何故こんな高いところに古代人が住んでいたのか不思議に思いPeriplus 社の The Ecology of Sulawesi を調べてみた。過去7000年の海面レベルの変化を示す図(p21)を見ると5000年前は海面が現在より5m程度高かったことが示されている。そうすると現在の平地には人は住めなくて山の中腹の洞窟に住んだのでしょうか。
マカッサルの市立博物館長 Andi Ima Kesuma 氏が最近出版した著書 "Migrasi & Orang Bugis" によると、この壁画は紀元前1000-2000年頃、モンゴロイド人が琉球、台湾、フィリピン、サンギ諸島を経由してスラウェシ島に渡ってきた可能性があると述べている。壁画の鹿や猪の描き方が日本の古代のものと似ているという。南スラウェシへ来ると日本人はなぜか遠い親戚の村に来たような感じを覚えるが、興味あるテーマです。
長い階段を登るので早朝マカッサルを出発して午前中暑くなる前に見学したほうがよさそうです。後日友人が行ったとき山の中はひと気が全く無く薄気味悪かったので途中で引き返したそうです。地元の人と一緒かまたはガイドを頼んだほうが良いでしょう。また服装は運動靴、帽子、汗拭きタオル、飲料水の準備がよいでしょう。レストランはありません。 公園へ行く途中、狭い急傾斜の悪路があるので車はセダンより4輪駆動かキジャンクラスの車の方が良いようです。
南スラウェシではマロス(Maros)県、パンケップ (Pangkep)県を中心に多数の洞窟(鍾乳洞)がある。The Ecology of Sulawesi によると、マロス 県内だけで約60箇所もの洞窟がある。バンティムルン(蝶の谷)の公園の中の”グア・ミンピ”(Gua Mimpi 夢の洞窟の意味)もそのうちの一つで観光スポットになっている。マロス県のほかパンケップ 県、ボネ (Bone) 県、トラジャ県なども含めると90箇所以上の洞窟が記録されている。洞窟の最長はマロス県の Salukan Kalang で 11km に達する。ボネ県の Mampu 洞窟(鍾乳洞)は全長135mあり観光スポットとなっていますが途中は大変な悪路でした。
Maros-Pangkep 一帯のカルスト地形の国立公園化、さらにUNESCOの世界遺産登録で問題となるのが数多くのセメント工場である。 Tonasa, Bosowa の2社が石灰岩を切崩しセメントの原料としている。そのため山を覆っていた森林を剥ぎとり山が大きく削られ変形しているところもある。また南スラウェシの洞窟で注意が必要なのは第2時大戦末期に日本軍が島内での戦闘に備え各地に地下要塞を構築していることです。要塞と古代洞窟と見分けるのも難しいようです。地下要塞は各地に多数ありますが、トラジャでも大規模な地下要塞を突貫工事で建設したことが「セレベス戦記」(奥村明著 1974年 図書出版社)にも出てくる。地元政府(Pinrang, Maros など)は旧日本軍の要塞を観光資源として活用したいと考えていることを聞いたことがありますが本当に価値があるのでしょうか。
追記:インドネシアの洞窟壁画、世界最古か (2014-10-10 日経記事)
インドネシアのスラウェシ島に残る洞窟壁画が約4万年前に描かれた「世界最古の芸術作品」となる可能性があるとの専門家の研究結果を米誌ナショナルジオグラフィックが伝えた。 同誌によると、これまで最古の洞窟壁画とされるのは、スペインのエル・カスティージョ洞窟のもの。約4万800年前に描かれたとされる赤い円や約3万7300年前と推定される手形の絵が知られている。 オーストラリア・グリフィス大の考古学者らが洞窟壁面のウラン含有量に基づく年代測定法を使いスラウェシ島の壁画を調査。その結果、同島マロス洞窟の手形は少なくとも3万9900年前のもので、さらに古い可能性があると確認された。スラウェシ島では1950年代以降、動物や手形など数百の洞窟壁画があるのが確認されていた(ワシントン=共同)。
追記:世界最古のマロスLeang Lengang 地区の洞窟壁画
(2014-10-10 Tribun Timur)
マロスの Leang Timpuseng 洞窟にある手形の壁画は、世界最古の壁画のものになりそうだ。これまで世界最古の洞窟壁画とされるのは、スペインのEl Castillo 洞窟の37.300 年前のものであった。壁画の年代測定は、2011年から2013年にわたって、インドネシア考古学研究所マカッサル歴史文化保護局、University of Wollongong (豪州)、Griffith University(豪州)3者によって行 われた。研究を担当したのは University of Wollongong の M Aubert氏と Adam Brumm 氏、インドネシア考古学研究所の T Sutikna氏と EW Saptomo氏、マカッサル歴史文化保護局の Budianto Hakim 氏 Muhammad Ramli 氏などである。 この壁画はだいぶ前に発見されているが、もっと若い年代のものと考えられてきた。今回の研究では、従来より精度の高いウラニウムートリウム年代測定法が用いられた。研究チームはマロスの7つの洞窟から19の表面のサンプルを採取した。これには12の手形、2つの動物の壁画が含まれる。 その結果、マロス洞窟の壁画年齢は 17.400 - 39.900年、最古のものは Leang Timpuseng 洞窟のものであった。 担当者によるとこれは世界最古の壁画であるという。 このことはスラウェシ島やインドネシアの島々には4万年も前から人類が住んでいたことになる。残る疑問は人類がアフリカから来る前にこの壁画はあったのだろうか?さらなる研究が必要である。
Lukisan Hewan Tertua di Dunia Ada di Leang Leang Maros
追記:世界最古のマロスLeang Lengang 地区の動物壁画 (2014-10-10 Tribun Timur)
南スラウェシ州マロス県のカルスト山塊の洞窟にある動物を描いた壁画は35,400年前のものであると、インドネシアと豪州の考古学研究チームが明らかにした。 壁画はかなり以前に発見されたものである。科学者達はウラニウム含有量に基づく年代測定法によって世界最古のものであることを確認した。動物壁画のほか、手形の壁画も39,900年を経過していることが確認されている。 この二つの壁画は Leang Timpuseng 洞窟内で隣り合っているという。描かれている動物は雄のバビルサで絵は赤みかかってバビルサの足、尾から毛並まで詳細に描かれているので容易に判別ができた。 絵は35,400年前に描かれたもので世界最古かどうかはわからないが、最古の壁画の一つだろう。
Lukisan Hewan Tertua di Dunia Ada di Leang Leang Maros
追記:ボネ先史時代の洞窟壁画
Tribun-Timur (Senin, 3 Oktober 2011 )
Tribun-Timur (Senin, 3 Oktober 2011 ) にボネ先史時代の洞窟壁画発見の記事があった。 発見場所はマロスの近くで、マロスとボネの県境、ボネ県側のボントチャニ郡(Kecamatan Bontocani)カルクエ村(Dusun Kalukue)タウルケの山林(kawasan hutan Pegunungan Taulekke)の中であ る。マロスの洞窟(Gua Leang-Leang)にある壁画と似ているという。
参考:BBC NEWS Cave paintings change ideas about the origin of art
更新日:2006-3-8
表題変更と更新:2014-10-14
追記:2014-10-16