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脇田 清之
2022-8-25
16世紀のはじめ、南スラウェシでは、タロ河 (Sungai Tallo) の河口のタロ王国 (Kerajaan Tallo)と、南部のジェネベラン河(Sungai Jeneberang)の河口に近いゴワ王国 (Kerajaan Gowa)とのアライアンス(業務提携)によって、マカッサル王国が誕生し、その後17世紀、マカッサルは、世界各国の大使館が並ぶ、世界有数の貿易国として発展しました。
タロ河の河口で国際交易によって栄えたタロ王国では1605年、この地域で最初のイスラム礼拝がこの王国で行わたそうです。また、タロ河の河口には、17世紀にポルトガル人によって造られた厚さ2.5m の岸壁の一部もあり、この小さな河口は貴重な歴史遺産となっています。
タロ王国、国王の墓地(2011年7月撮影)
この 61.5 km の長さの河は、カラポロンポ山(Gunung Kallapolompo, 標高 1,100 m) に源を発し、流域面積は約 368 km2 (CTI Engineering CO Ltd, PT Virama Karya and PT DCC Consultants. Co. Ltd., 2001)。 マカッサル市の市街地は、タロ川の下流域に位置し、水路勾配が約 1/10,000 と非常に緩く、水の流れも緩いため、洪水が発生しやすいようです。 またタロ川は、都市雨水排水の主要な排水路となっています。また河の河口からの塩水浸入が 30km 内陸に伸び、飲用には塩分が強すぎるため、川は現在、飲料水の供給に貢献していないとのことです。
タロ河の河口部(Google Map):河口の左岸にタロ王国の墓 (Kings of Tallo Cemetery)の文字が見えます。
上の写真で見ると河口部分が狭くなっていて、雨期の豪雨が続く時期にはここがネックになっているように見えます。河川の拡幅はマカッサルのご先祖であるタロ王国の聖地でもあり難しい問題です。一方、マカッサル南部のジェネベラン河(Sungai Jeneberang)は日本政府の支援によってビリビリダムが1999年に竣工しています。(下の写真)
Tallo河の遊水池(右上)と Jeneberang 河上流にある Bilibili ダム(左下)(Google Map)
Tallo河は水路の勾配が低く、上流にダムを設置することは難しいようです。そのため河口近くに遊水池がありますが、豪雨が続くと貯水能力を超え、市街地が冠水する被害が出るようです。河口にはマカッサルの歴史遺産があり、簡単に河口を拡幅することは難しいようです。マカッサルの歴史遺産を護りつつ、国際都市マカッサルに相応しい治水対策を期待するところです。
太平洋戦争の初期、南スラウェシほか東部インドネシア各地で活躍したハジ・ ウマール・ファイサル 小林哲夫の墓は、いまマカッサルのイスラム霊園(墓標識:209H)にあります。マカッサルの墓の建立からまた50年以上を経過しましたが、墓地は洪水による土砂の流入もあり、殆ど埋没した状態です。
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